
ボーダフォン買収以後、なかなか明らかにされることのなかったソフトバンクの携帯電話事業。10月1日の社名変更を目前にした9月28日、ついに2006年秋・冬モデルと新サービスが発表となった。
孫正義社長が強調していたのは「ラインアップ数の多さ」。すでに秋冬モデルを発表しているKDDIのau、過去のNTTドコモのラインアップ数を引き合いに出し、いかにソフトバンクが端末数を多く揃えたかをアピールした。■ドコモ、auに見劣りしない品ぞろえ
実際、ラインアップを見渡すと、話題になるような端末が豊富に揃っている。ボーダフォンのフラッグシップメーカーである
シャープは、すべてVGA液晶を搭載。「910SH」では、業界初となる光学3倍ズームのオート
フォーカスに対応した5メガピクセル
カメラが目を引く。

サムスン電子やNEC、久々の登場となるパナソニックは、いずれも本体サイズが薄いのが特徴。昨今、大型化が進む他の携帯電話に比べると、持った瞬間にその薄さに驚くほどだ。
また、「WindowsMobile5.0」を搭載した台湾メーカーHTC製も投入するなど、
ビジネス用途にも配慮する。端末ラインアップでは、ドコモやauにも量販店の店頭で見劣りしない品揃えになったといえるだろう。
ソフトバンクの発表が始まるほんの1時間ほど前、NTTドコモの中村維夫社長が定例会見で「今後、20機種以上を発表する」と明言したのを受け、孫社長は「あちらは2006年3月までの数字。こちらは年内に発売するモデルで、来春にもちゃんと新たな製品を用意している」と、対抗心をむき出しにした。
■ソフトバンクらしさ示す独自サービスも
サービス面でも、NTTドコモやauが手がけるデコレーションメールと同等の「アレンジメール」、待ち受け画面に
リアルタイムの情報を表示する「ライブ
モニター」、プッシュトゥトーク機能である「サークルトーク」を開始するなど、NTTドコモやauで提供されているサービスを揃え、同じ土俵に立つことができた。
また、検索ポータルである「ヤフー」との連携強化を筆頭に、3D
モバイルコミュニケーションサービスである「S!タウン」といった独自サービスも用意するなど、ソフトバンクとしての個性を出すことにも成功している。先ごろ、報道されたSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)も近日中に登場する見込みのようだ。
これまでは番号ポータビリティの開始によって、「ボーダフォンの一人負け」の可能性も指摘されていたが、ソフトバンクに変わり一通り端末を揃えたことで、混戦模様になる可能性も出てきた。
ただし、買収を決断してから8カ月程度で準備を進めただけに、「完璧」とは言い難い。発表会でも事業内容や発言に不安な点も見え隠れした。
特に
ネットワーク品質と料金に関しては、まだまだ不透明なところが多い。
「圏外が多い」とユーザーから不評のネットワークに関しては、年度末までに4万6000局まで基地局を
増設するというが、「新しい技術を開発中。しかし、詳細はまだ言えない」(孫社長)と煙に巻く。
誰もが期待する料金施策に関しても「大人のソフトバンクに生まれ変わったので、無理はしない」(同氏)と、とたんに歯切れが悪くなってしまった。
■依然綱渡りの携帯電話事業
これまで、NTTドコモやauは、儲からないとされるインターネットビジネスを携帯電話向けに特化することで、利益の上がる構図に仕上げていった。ソフトバンクはそのビジネスモデルを否定し、あえてインターネットビジネスそのもので携帯電話事業に勝負を挑もうとしている。しかし、今回の発表では、他社に追いつきそうな印象は受けたが、さらに他社からユーザーを獲得し、新たな収益源を見いだすような革新的な話は一切、聞くことができなかった。
とりあえず、端末とサービスは揃った。しかし、事業の証券化の話もあり、ソフトバンクの携帯電話事業は、絶対に成功しなくてはならない綱渡りの状態が続いている。
今回の発表だけでは、ソフトバンクの「危うさ」をすべて解消するには至っていない。ソフトバンクはユーザーの期待値も高いだけに、それに応えるだけの「将来像」をきちんと示して欲しかった。