なかなかパブリック・ドメイン(公共財産)の考えが根付かないわが国。
先日の『ローマの休日』裁判は1953年作品はパブリック・ドメインにあたるかどうかの裁判で、著作権法を所管する文化庁が、1953年公開の映画について、「著作権保護期間が終了した2003年12月31日午後24時と、改正法施行の2004年1月1日午前0時は同時で、改正法が適用される」と説明し、改正法前の公開50年を過ぎる2004年から著作権フリーのパブリック・ドメインとは扱わずに改正法適用の公開70年、つまりは2024年まで著作権保護対象にするという判断が適切か争われたもので、公共財産の確保を果たすべき文化庁が大手映画会社を擁護するというまことに不思議な話。
(参考:「ローマの休日」は権利消滅 東京地裁、格安DVD認める(産経Web)
著作権法に関しては日本国内に適用されるもの、国外作品の取り扱い、それに国際社会から孤立していた期間を加算する戦争加算なるややっこしいものも絡んでいる。
著作権法だけでもひとつの記事になると思いますが、ここではそういう著作権が切れた映画のDVDの楽しみ方をご教授しよう。
先の判決で1953年公開までの映画作品はすべてパブリック・ドメイン(公共財産)と認められたのかというとそうでもなく、アメリカのように旧法で著作権申請がされていれば、1953年以前でも著作権保護になる例もあれば、著作権記述がなくパブリック・ドメインになってしまった1963年作品の『シャレード』の例などもある。
パブリック・ドメインになった映画でも音楽の編曲などが著作権保護されているものもあり、なかなか難しいのだけれど、そのような映画をDVDなどで販売する際、著作権に引っかかりそうな箇所をカットしてDVD化するようである。
例えば、映画オープン時のライオンが吠えるとか、エベレストが映るなどの会社ロゴマーク場面、ここら辺は映画会社の著作に抵触するのでカットとか、なされていたりする。
また、低予算でのDVD化のため、字幕の間違いが多い場合もあり、画質もどのマスターテープを使うかで、変わってくる。
書店等で売られる格安のDVDには以上のようなデメリットが挙げられるのだけれども、もっと問題なのが、メーカー製のDVD。
『ローマの休日』のような現役メジャー企業が提供するものはよほどの価格差のない限り、メジャー製を買うべきだろうけれども。
マスターテープといってもピンからキリまであり、最高の状態のものをリマスターしたものがメーカー製のDVDとは限らない。業界再編の激しいアメリカでかつてメジャーを誇っていたRKOという映画会社などはDVDメーカーがフィルムを探し出し、DVD化したりしているし、著作関係の複雑なヨーロッパ映画はマスターテープを見つけるだけでも大変という。
そして、日本のDVDメーカーでもこのリマスター作業を簡略化し、ヨーロッパの放送形式で収録されたDVDを日本の放送形式に変換しただけのものを売っていたりするケースも時折見られ、すでにDVD化されているものが、別会社から「デジタルリマスター」の売り文句で出されても、マスターテープが以前発売のものより悪い作品もあるなど、問題は絶えない。
その最も有名な例がRKOのオーソン・ウェルズ監督作品『市民ケーン』で、遠景と近景をぼける事なく撮ったパンフォーカスが抜けの悪い最悪の画質でメーカー、格安ともに売られており、最上のリマスターを提供するアメリカ盤に比べれば、日本の文化レベルの低さは泣けてくるほどと云われている。
また、日本映画もパブリック・ドメイン対象作品はあるのに企業保護を名目に、中国などで出されるパブリック・ドメインの日本映画が輸入禁止になっていたりもする。
早い話が日本国民は文化を享受したければそれなりに金を払えという事なのかなとも思うけど、熱心な映画ファンにより、格安DVDの製品状況がネットで語られたりするので、メーカー制の粗悪品チェックや良質格安DVDを選ぶ術が出来ただけ、民主主義になったのかなと。(笑)
昔、フランス映画に『天井桟敷の人々』という名画があったけれども、この国には演劇小屋の誰もが気楽に観られる天井桟敷が用意されぬまま、市民ホールの存続問題が討議されていたりする。
文化先進国アメリカではパブリック・ドメインの映画をファイルとして、無料配布しているサイトもあり、DVDなどのメディアとして欲しい場合はDVD-Rで提供というサービスもあり、そこにはアメリカで著作権申請し忘れたのか、『復活の日』などの日本映画も数本含まれている。
格安DVD、片手に「昔はダビングテープで我慢したんだからまぁいいっか」。こんな語りも聴かれるこの国の貧しさ。『自由を我らに』といいたいところ。
ランキングのご協力お願いします